ツバメの読書ブログ

読書記録や旅行記を中心に。

いちじくの葉(作:中原中也)

突然ですが、果物のイチジクが大好きです。
どれほど好きかというと、祖母が大好きな私(そして家族の他のメンバー)のために、庭で育てて収穫する程です。
毎年収穫して、生を堪能し、ジャムに加工し、最後の一滴まで名残惜しくすくって食べます。
みなさんの好きな食べ物は何でしょう?
色々な人に聞いてみると、みんなそれぞれ違っていて面白い。
海で育った人の好みと、山で育った人の好みが違ったり。
そういえば、イチジクを好きな理由はなんだろう。
"好き"の理由を余り考えていなかった。
まず、見た目は余り好みではない。紫で、若干気持ち悪い。
特に、中身が。。。
ある意味グロテスクな見た目をしている。
でも、やっぱりあのさっぱりとした生のイチジクの味(加工されたものも大好きだが!)と種の粒粒感がたまらない!もはや中毒笑 
あ~今から秋が恋しい!!!


そんな私が愛してやまないイチジクをテーマにした中原中也の詩がある。
「ゆあーん ゆよーん ゆやよん」とか「汚れっちまった悲しみに」が有名な彼である。
フランス文学部卒の私にとって、中原中也のあのフランスにとっても憧れている感じ、なんかとても共感できてしまう!こういう感じの先輩とか、いたいた!!

いちじくの葉
作:中原中也


いちじくの、葉が夕空にくろぐろと、
風に吹かれて
隙間(すきま)より、空あらわれる
美しい、前歯一本欠け落ちた
おみなのように、姿勢よく
ゆうべの空に、立ちつくす
――わたくしは、がっかりとして
わたしの過去の ごちゃごちゃと
積みかさなった思い出の
ほごすすべなく、いらだって、
やがては、頭の重みの現在感に
身を托(たく)し、心も托し、
なにもかも、いわぬこととし、
このゆうべ、ふきすぐる風に頸(くび)さらし、
夕空に、くろぐろはためく
いちじくの、木末(こずえ) みあげて、
なにものか、知らぬものへの
愛情のかぎりをつくす。


ちなみに、いちじくの葉はこんな形↓