ツバメの読書ブログ

読書記録や旅行記を中心に。

接吻(作:江戸川乱歩)

青空文庫で見つけたので、リンクを下記に貼ります↓

http://www.aozora.gr.jp/cards/001779/files/57186_60204.html


「近ごろは有頂天の山名宗三であった」から始まる短編。
山名宗三が有頂天なのは、恋妻のお花を嫁にもらったからである。
定時になると毎日そそくさと退社する宗三。


そこで気が付いた。
なんと当時の退社時間、午後4時である!!
出勤時間は書かれていないが、私の出社時間午前8時半、退社は夜22時以降に対して、
何てお気楽な時代だったのだろう!羨ましい限りである。


さて、それはさておき、
ある日いつもの様に帰宅し、『お花を驚かせてやろう』とソロソロと音を立てずに茶の間へ向かうと...
一枚の写真に接吻をする妻の姿が!
宗三は『あれは自分の写真だろうか、それとも...』と内心穏やかじゃない。
しかも、今帰ったふりを装って「オイ、今帰った」と声に出すと、お花がその写真をさっと帯の間に隠す。
その行動に益々疑念が積もってゆく。
だが、あからさまに「誰の写真だ」とも聞けず、結局二人は気まずい時を過ごす。
そして、お花がさっと立ち上がる。
『写真をどこかへしまいに行くのだな』と考えた宗三はこっそりお花の後を追うと、果たして納戸である。
そっと障子の隙間越しに見れば、お花が写真を正面のタンスの上の小引き出しの左端へしまったのは見えた。


その夜、宗三はそっと納戸へ向かい、例のタンスの引き出しを確認すると、そこには...何と勤め先の役所の村山課長の写真が...


この後、嫉妬に狂った宗三は次の日村山課長のいる役所に辞職を出し、ついにお花に「写真を持っておいで」と談判を始める。
例の写真をずたずたに破り捨てて火鉢にくべたところで、お花がワッと泣き出すかと思いきや、
やにわにクツクツと笑い出す。
「あれは、あれは、あなたのお写真でしたのよ」


ここから鏡トリックなど出てきて面白く、また女と男の性格差なども紹介されているので、
興味のある方は是非ご一読いただければと思う。


この話を通して考えるのは、
真実を見極めることの難しさだろうか。。。


何にしろ、男から見て、女は謎多き、怖い一面をもった生き物だ、ということは間違いない。